フォトギャラリーの鐘(ベル) 第十六話


読者の写真から生まれる物語

フォトギャラリーの鐘(ベル)               麗一


第十六話 (7月28日号掲載)



可愛い子どもを授かることが出来ました

そう言葉が添えられた写真が、七夕飾りにぶら下がっていた。
写真を吊るすのは珍しいが、これは、ある母親の感謝の気持ちなのだ。
3年前の七夕で、願いを認めた短冊を芦田川に流してすぐ、待望の第一子を身ごもったのだった。

「マ~マ、おはな~」
「そうね、綺麗じゃね」

成長した我が子と、上下のあやめまつりを訪れた母親が、満開のあやめの中で楽しそうに会話をしている。

「ママって呼ばれる度に、どうしてこんなに幸せを感じるんじゃろう?」
母親が、そうつぶやきながら空を見上げた時、

キラキラ キラキラ キラッ

真昼の空に、一際明るい星が輝いた。
あまりの眩しさに目を閉じると、瞼の裏に、生まれてくる前の我が子が、雲の上にいる様子が垣間見えた。

家族が増えて、賑やかになりますように

「わたし、この短冊を書いた人にする」

それは、これから生まれる子どもたちが、自分の母親を選んでいる姿だった。

「うちらは、首無地蔵にお願いしたこの人の所に双子になって生まれて、犬を飼いたいなぁ」
「ぼくは行かん! だって生まれてもママやパパにいじめられたらイヤじゃけぇ」
「オレも行きとうない! 遊んどって車にひかれたらいけんし、生まれる勇気も無いし」

最近の地上での悪い噂を聞き、生まれることに尻込みをする者もいて、
「そんなん聞いたら、うちらもやっぱり…」
と、双子たちも考え直し始めた。

しかし、そんな中でも
「わたしは怖くなんかないよ。ママに会えるんじゃもん。いっぱい抱っこしてもらうんじゃ」
その子に迷いなど無かった。ただ一心に、自分が選んだ母親に会いたがっていた。

キラキラ キラキラ キラッ

再び、星が瞬いた。

地上で空を見上げていた母親があやめに視線を移すと、真っ直ぐ自分を見つめるその子がいた。

「私の所へ生まれて来てくれてありがとう。呼ばれる度に幸せを感じていたのは、あなたの勇気のおかげなのね」

母親は、駆け寄る我が子を思い切り抱きしめた。

「マ~マ、すき!」
「ママも、だ~いすきよ」



フォトギャラリーの扉は、今度はあなたのところに、突然、現れるかもしれない。





麗一 プロフィール
市内在住のライター。
本業の傍ら、当紙愛読者が写した写真から生まれる物語を書いている。



他の特集

イラストダウンロード

お正月

お正月 [イラスト]

お正月

お正月 [イラスト]

お正月

お正月 [イラスト]

全部見る